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かんじる、とろける、いまここで ~遠い記憶の長距離航路~
第1章 -完結- 20年ぶりの横浜で
(もう何年ぶりだろう…)
 43歳になったこの春、企画部長に昇格した広川麻美は、1人で黄昏時の山下公園を歩きながら氷川丸を目にして思った。
横浜市内にあるクライアントの事務所で長い打合せが終わったばかりである。
 麻美の勤め先である建築コンサルタント事務所は大阪の淀屋橋に本社があって、自宅はそこから電車で40分ほどの高槻市にあるので、そのまま帰れば充分余裕のある時間帯に帰宅できるのだが、せっかくの週末なのでずいぶん久しぶりの横浜に泊まってのんびりしようと思ったのである。
(どうぜひとりなんだし…)
 前の年の末に5年一緒に暮らした夫と、麻美は離婚したばかりだった。

 もう20年以上前になるだろうか、以前勤めていた都内にある中堅の建築設計事務所で可愛がってもらい、深い関係になった部長が、結婚前の麻美をよく横浜に連れて来てくれていたのである。
 妻子ある彼との数年続いた関係を解いたのは麻美からであったが、別れたのち昔の同窓生との付き合いが再燃して結婚してからも、その別れた部長久我原のことを彼女は忘れられずにいたため、長い間横浜へ足を向けることができずにいた。
 横浜の街と雰囲気に触れるのが辛く、その呪縛から解かれるのには長い年月がかかったのである。

 何度か久我原がデイユースで眺めの良いコーナーダブルを取ってくれていた思い出のホテルはもうなくなっていて新しいホテルに建て替えられていた。
 予約を試みたときにそれを初めて知った麻美は、またひとつ過去が消えたことを知って寂しさの中にもふとした心の安らぎを感じたのである。
 山下公園から見上げた新しいホテルに、当時の特徴のあるバルコニーがもうそこにはなかった。

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