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かんじる、とろける、いまここで ~遠い記憶の長距離航路~
第1章 -完結- 20年ぶりの横浜で
***
 窓際のベッドに体を横たえてひとつを思い出すと、次々に遠い昔のことがはっきりと思い出されて麻美は体が熱くなってくるのを覚えた。
(横浜に来ちゃったからだわ…)
 アメニティのワイングラスから離れた手が自然と胸に伸びる。
(あ…)
 別れた夫との交渉は意外にも淡白だったうえ、日が経つにつれて作業の印象を感じるようになっていたが、久我原からの愛され方はひたすら悦びの尾根を歩かせられ続けるようなもので、麻美は抱かれるたびに自分が自分でないように思えたのだった。
 久我原にもう一度愛されてみたい…
 
 部屋の灯りを消して体をベッドに移し、カーテンを少し開けると港の灯りが見えた。
 その灯りを見つめながら指がお臍から下へ辿っていく。
 久我原はよくそんなふうにして焦らすような愛撫をしてくれた。
 ショーツをくぐった指が花芯へ伸びて、最初はゆっくりと、そしてだんだん早く小さな円を小刻みに描く。
 久我原が教えてくれた愛され方を思い出しながら指が辿る。
 親指と人差し指で胸の突起を転がしながら、花芯をこする指に力がこもる。
(ああ… いい… きもちいい…)
 まるで彼の腕に抱えられたかのように大きく両脚を開いて高く上げると、一気にピークが見えた。
(いきそう… いい… い…)
 そのときが来てつま先に力が入り、握るようにして無意識にぎゅっと曲がる。
(い… いく… いく、いく… ああああ… いくっ…いくっ!)


 窓から差す薄あかりに照らされながらのけぞったその瞬間、麻美の耳には昔聞いた遠い汽笛が聞こえたような気がした。
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