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真昼の幽霊
第1章 真昼の幽霊

「暇すぎる」
今日の暑さに似合わぬ上着を羽織った女の呟きは、真夏の空に溶けていく。
ふと下を見ると女子高校生たちがスカートをひるがえしながら通学路を歩いているのが見えた。
「知ってる?ここの坂道に幽霊が出るらしいよ」
「あ~最近、噂になってるよね」
その会話を上から眺め、だぼついた袖からおもむろに両手を出してひと叩き。するとあたりに乾いた音が鳴り響いた。
「え!?なに!?蝉の音?」
「これってラップ音?やだ~~」
「朝なのに幽霊なんてでるの!?」
きょろきょろとしながら急いで坂を駆け上がっていく少女たちをしたり顔で見送ってやる。
そう、幽霊とは私のことなのだ。
ぶらぶらと膝から先が見えない足をばたつかせながら空を泳ぐ。
気づいた時には幽霊になっていた。もう何年経ったのだろうか。記憶は少しあるが名前が思い出せない。昼も夜も関係なく時間を持て余してる。
何だかこう念力とかが使えるわけでもなく、自分が身に付けていたモノ以外を動かすことも人にも触れられない。声だって届かない。
最近になり拍手をすると音が鳴らせると分かったので、人を驚かすことにハマッている。
「さ~次は誰を脅かしてやろうかな~!」

