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真昼の幽霊
第2章 とける

「ん」
「おふよ~」
ふと周りを見るとまたも何かを口にしている男が目に入る。男が頬張るたびに紙の包みがかさりと音を立てている。ローテブルには赤い箱と細い何か。
「あ、それ」
「ハンバーガー頼んじゃった!」
「……ふーん」
ちらちらと男が食べる様子を見てしまう。彼は何を思ったのか、ストローをドリンクから引き抜くとまだ手を付けていないハンバーガーに突き刺した。
「ん、ゆーちゃんにお供え~。一緒に食べよ」
不恰好にストローが刺してあるハンバーガーを鼻先に捧げられている。
「はぁ?ストローって……そんなので……あっ、」
不思議なことにハンバーガーの香ばしい匂いが鼻をかすめ、たまらず一口齧ってみる。タローが捧げているハンバーガーに見た目の変化はないが、いつかの味が口いっぱいに広がっていた。顔がどこもかしこもゆるんでいく。
「おいひぃ……」
懐かしさに涙が出そうだった。もう一口もらおうと口をあけたがハンバーガーが逃げていき、かわりに男の顔が近づく。笑っているが眉を八の字にしているタローを静かに見つめる。
「はは。……ゆーちゃん成仏したらヤダから、もうあーげない」
「うぅっ!酷い!!」
ふと、外から犬の鳴き声が聞こえてきた。ベランダに繋がる掃き出し窓へ目をやるとあたりはすっかり暗い。
そして、ガラスには男の姿しか反射されていないのが分かり、少しだけがっかりしたような気持ちになったのが悔しくて、わちゃわちゃとタローが手に取るハンバーガーを追いかけ夢中で動き回った。
「ねぇ、パンツはいてないの忘れてない?」
「!!!!きゃーーー!!見ないで!!!!」
幽霊になってから初めての騒がしい夜だった。

