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雨夜の灯(あまよのあかり)ー再会から始まる恋
第11章 「雨あがり、ぬくもりの余韻」
 窓を打っていた雨は、いつの間にか止んでいた。
 カーテン越しの空は薄曇りで、月の気配だけがうっすらと白く浮かんでいる。

 「……静かだね」

 ソファに凭れた澪がぽつりとつぶやく。
 環はキッチンから戻ってくると、彼女の隣にそっと座った。

 「静かな夜、好きでしょ」

 「うん。……あなたといると、余計にそう思うの」

 ふたりの間にあったクッションが、いつのまにか床に滑り落ちた。
 澪が環にもたれかかるように身体を寄せる。
 環はその肩を抱き寄せて、額にそっと口づけた。

 「澪……」

 呼ばれるだけで、胸がきゅっとなる。
 名前にだけ含まれる音の優しさを、澪は覚えはじめていた。

 環の指先が、澪の髪を梳きながら首筋にふれる。
 なだらかなラインをなぞるように、ゆっくりと、何かを確かめるように。

 「……くすぐったい」

 そう言いながらも、澪はその手を止めさせなかった。
 むしろ、もっと――と求めるように、細い指が環の腕にふれた。

 環の唇が、澪の頬に、耳に、そして唇にふれる。
 澪は目を閉じ、環の肩に手を添えてその深さを受け入れる。
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