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母なる果実
第4章 Page.3 果実の動揺 前篇

白んだ光がカーテンの隙間から差し込み、鳥たちの声が微かに届く。女は目を皿にして黙々とノートパソコンに文字を打ち込んでいた。
「おわっ…たぁ!」
ため息にも似たその言葉と共に、思い切り全身を伸ばしながら、背もたれに体重を預ける。ちらと壁の時計に目をやると、短針がそろそろ"5"を差そうかという所だった。はぁ…と、心なしかトーンの落ちたため息を吐く。
――ピロンッ。
見計らったかのように、傍のスマホが鳴った。こんな時間に、碌でもない連絡じゃなきゃいいけど…疲れ切った顔で渋々と手に取ると、画面には思いがけない名前が表示されていた。
『起こしたらごめんなさい
今日どこかで会えますか?』
あの人からだ…!そう気づいた瞬間、思わず口元が緩む。
しかし、こんな時間に送ってくるなんて初めてだ。どうしたんだろう?
『起きてたから大丈夫だよ
今日はいつでもおっけーです
なんなら今からでも!』
最後の一文には、冗談とちょっぴりの期待が込められていた。間を置かずに返事が来る。
『行きます』
たった四文字にどきっと心臓が跳ねる。
『はーい!待ってるね』
平静を装って返したが、いつも以上に淡白な彼の文字に、心配と戸惑いが交錯していた。すぐに彼に会わないと――何故だかそんなふうに思えた。
ほどなくしてインターホンが鳴る。部屋のモニター見て、女はぎょっとしてしまった。彼であることは間違いないのだが、あまりに影を帯びてまるで幽霊のような佇まいだったのだ。女は慌てて玄関へと駆けた。
玄関チェーンを外しドアを開けると、そこに立つ彼はいつも以上にスーツがくたびれ、髪も心なしかぼさぼさになり、虚ろな目をしてそこにやっと立ち尽くしていた。
「大丈夫…?」
いらっしゃい、よりも先に心配の言葉が出た。彼は、隈を溜めた沈んだ目で女を見ると、表情を変えぬまま大丈夫だよとでも言いたげに、手を腰当たりでひらひらと振ってみせる。
「とにかく入って?」
これは多分大丈夫じゃないな、と一先ず家の中へ招き入れる。
のっそりとした足取りでリビングに向かう彼を横目に、女は玄関の鍵とチェーンを掛け、急いでその暗い後ろ姿を追った。
「おわっ…たぁ!」
ため息にも似たその言葉と共に、思い切り全身を伸ばしながら、背もたれに体重を預ける。ちらと壁の時計に目をやると、短針がそろそろ"5"を差そうかという所だった。はぁ…と、心なしかトーンの落ちたため息を吐く。
――ピロンッ。
見計らったかのように、傍のスマホが鳴った。こんな時間に、碌でもない連絡じゃなきゃいいけど…疲れ切った顔で渋々と手に取ると、画面には思いがけない名前が表示されていた。
『起こしたらごめんなさい
今日どこかで会えますか?』
あの人からだ…!そう気づいた瞬間、思わず口元が緩む。
しかし、こんな時間に送ってくるなんて初めてだ。どうしたんだろう?
『起きてたから大丈夫だよ
今日はいつでもおっけーです
なんなら今からでも!』
最後の一文には、冗談とちょっぴりの期待が込められていた。間を置かずに返事が来る。
『行きます』
たった四文字にどきっと心臓が跳ねる。
『はーい!待ってるね』
平静を装って返したが、いつも以上に淡白な彼の文字に、心配と戸惑いが交錯していた。すぐに彼に会わないと――何故だかそんなふうに思えた。
ほどなくしてインターホンが鳴る。部屋のモニター見て、女はぎょっとしてしまった。彼であることは間違いないのだが、あまりに影を帯びてまるで幽霊のような佇まいだったのだ。女は慌てて玄関へと駆けた。
玄関チェーンを外しドアを開けると、そこに立つ彼はいつも以上にスーツがくたびれ、髪も心なしかぼさぼさになり、虚ろな目をしてそこにやっと立ち尽くしていた。
「大丈夫…?」
いらっしゃい、よりも先に心配の言葉が出た。彼は、隈を溜めた沈んだ目で女を見ると、表情を変えぬまま大丈夫だよとでも言いたげに、手を腰当たりでひらひらと振ってみせる。
「とにかく入って?」
これは多分大丈夫じゃないな、と一先ず家の中へ招き入れる。
のっそりとした足取りでリビングに向かう彼を横目に、女は玄関の鍵とチェーンを掛け、急いでその暗い後ろ姿を追った。

