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社長は彼女の“初めて”を知っている
第1章 仮面の女

でも、ひとつだけ、はっきりわかったことがある。
──これはもう、“練習”なんかじゃなかった。
エンジンの始動音が静かに車内を満たした。
走り出す直前、加賀見さんがふと私を見て言った。
「……本当に、誰ともしてなかったのか」
振り返った彼の横顔は、どこか冗談めかしていたけれど、
その目だけは真剣だった。
返事ができなかった。
まさか、この歳になって──
28歳にもなって、キスすら未経験だったなんて。
誰にも言えなかった秘密。
自分でも「恥ずかしい」と思ってきた部分。
それを今、まざまざと暴かれている気がして。
「玲奈。」
再び名前を呼ばれた。
車がゆっくりと動き出すのに合わせて、私は小さく、でも確かに頷いた。
「……うん。」
──これはもう、“練習”なんかじゃなかった。
エンジンの始動音が静かに車内を満たした。
走り出す直前、加賀見さんがふと私を見て言った。
「……本当に、誰ともしてなかったのか」
振り返った彼の横顔は、どこか冗談めかしていたけれど、
その目だけは真剣だった。
返事ができなかった。
まさか、この歳になって──
28歳にもなって、キスすら未経験だったなんて。
誰にも言えなかった秘密。
自分でも「恥ずかしい」と思ってきた部分。
それを今、まざまざと暴かれている気がして。
「玲奈。」
再び名前を呼ばれた。
車がゆっくりと動き出すのに合わせて、私は小さく、でも確かに頷いた。
「……うん。」

