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第1章 仮面の女

まったく、自分がモデルか何かと勘違いしてるんじゃないの、ってくらい。

「社長こそ、写真撮られたら困るんじゃないですか？ 女の子にモテそうだし。」

皮肉混じりに言ってみると、加賀見さんは口角をゆるめた。

「お前が言うなよ。“恋愛未経験のセクシー女王”さん。」

「ちょ、やめてくださいよ、そういうの……」

慌てて顔を背ける。

だって、それは私の“唯一の秘密”だったはずなのに──

この人、なぜか全部見透かしてくる気がする。

「……そろそろ恋でもしてみれば？ 仕事だけじゃつまらんだろ。」

ぽつりと、そんなことを言う加賀見さんの横顔はどこか寂しげで、

私は一瞬だけ、答えに詰まってしまった。

──恋って、どうやって始まるんだろう。

知らないはずの感情が、喉の奥でざわりと揺れた。