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純潔の檻 ―敵国の騎士に囚われて―
第1章 堕ちた城
目を開けた私は、彼の瞳とぶつかった。

そこに映るのは、騎士の冷徹でも、皇子の誇りでもなかった。

ただ――男の、抑えきれない感情。

ゼノは静かに、私の頬から手を離すと、カイルに向き直った。

「……確かに、美しい唇でした。」

その声の奥にある、かすかな怒りを、兄は察したのかもしれない。

「ふぅん。思った通りだ。」

そう言ってカイルは、愉快げに笑いながら玉座へと腰を下ろした。

「この戦利品……やはり、おまえに管理を任せるとしよう。」

それは、所有を譲るという意味だった。

けれど私には、それ以上に――

ゼノの“優しさ”が、何より怖かった。

この男が、私をどうしようとしているのか。
そして私は、この男にどう抗えばいいのか……まるで分からなかった。
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