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柔肌に泥濘んで、僕は裏返る
第13章 一気呵成のカタルシス
待ち合わせ当日。

指定されたカラオケ屋の前は、人の流れでごった返していた。

裕樹は少し離れた場所に立ち、雑踏を行き交う人々を眺めていた。

(やばい…行きたくない…)

頭では、ただ会って話をするだけだと分かっている。

痛めつけられたり、命のやり取りをするわけでもない。

顔も名前も声も知らない、初対面の人間と待ち合わせをしているというのは慣れそうになかった。

胸は嫌に高鳴り、手のひらはじっとりと汗ばんでいた。

裕樹は人波に紛れて何度も視線を走らせると、ひとりだけ店の前に立ち尽くす女性の姿があった。

周囲の人々が流れていく中、そこだけが静止しているように見える。

(……あの人、ずっと動かないな)

どんな外見なのかを一目見ようと、裕樹は、人混みを縫うように動いて近づいていく。

声をかけたら気づく距離まで近づいたその瞬間──女性が顔を上げ、まっすぐこちらを見た。

視線がぶつかり、行き交う人の流れがスローモーションのようにゆっくりと動いた。

視線が交わったのは数秒程度なのに、数分間見つめ合っているように時間が流れる。

「アキ先生…?」

「楓さん…ですか?」

昔の合言葉の掛け合いのように、お互いの名前を確認できると、楓は「こんばんは〜」とふわっと笑った。

まず裕樹の目に飛び込んできたのは、圧倒的なまでの豊かな膨らみだった。
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