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柔肌に泥濘んで、僕は裏返る
第1章 青天の霹靂
高校の最寄り駅前で時間を潰していたその日も、例によって裕樹は"大きい人"探しに夢中だった。

胸元を揺らしながら歩く女性を、見えなくなるまで目で追ってしまう。

そのときだった。

「兎谷くん。さっきからおっぱいばっかり見てる。」

背後から、冷気のような声が落ちてきた。

ぎくりと反射的に肩が跳ねる。

ゆっくりと振り返ろうとする先に、視界の端に大きい曲線が映り込んだ。

声の主は、すぐ分かった。

「み、三原さん!? いきなり何…?」

三原葵(みはら・あおい)。

物静かで、どこか氷のような雰囲気を纏ったクラスメイト。

言葉では否定しながらも、裕樹の視線は、条件反射のように葵の胸元へ吸い寄せられていく。

(……やっぱ三原さんが一番デカ……)

同年代とは思えない、圧倒的な存在感。

「今も見てた。」

淡々と告げる葵。

怒っているというより、気づいているという表情に近い。

「み、見てないってば!」

視線を逸らしながらも、口だけが苦しい言い訳をする裕樹。

だが葵は白々しく告げた。

「ね、今コンビニの方に向かって歩いてる白い服のお姉さん……すっごく大きい。」

その言葉で裕樹の視線は、反射のようにコンビニの方向へ向いてしまう。

ごまかせない癖、あるいは習慣。

自分自身が制御できない視線は、言い訳より先に体が証明していた。

この日、裕樹が三原葵と目が合った瞬間、胸を追うこの癖が初めて第三者に暴かれた。
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