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四谷荒木町の女〜再会の熱い夜
第4章 男の疑惑と女の思惑と
「すごかった。良かったわ」

 裸で抱き合い、気だるい余韻に浸っていると、女がぽつりとつぶやいた。何も言わずに、肩を抱き寄せる。

 ……そういえば。

 急に彼は思い出した。

 ……聞くべきか。それとも聞かないほうがよいのか。

 迷った挙句、口を開いた。今、聞かなかったら、あとで後悔するに決まっている。

「きみのうなじとお腹にほくろがあるんだ」
「えっ。あ、ああ。それがどうかしたの?」
「うん」

 言い淀んでから、核心に切り込んだ。

「しのぶにも、本物の彼女にも、同じ場所にほくろがあったんだよ。きみを抱いていたら、思い出したんだ」

 急に黙り込んだ女へ、さらに、

「やはりきみは、しのぶじゃないか? そんな偶然はあり得ないと思ったんだが、今はわからなくなった」
「……わたしは……わたしの名前は、美和よ」
「うん。だが、名前を聞いたとき、きみは……」

 言いかけたその時、抱いている彼の腕から抜け出した女が身体を起こした。

「悪いんだけど、帰ってくれる?」

 固い声でそう言った。横を向き、目を合わせようとしない。
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