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池袋ウエストゲート・ラブホテル〜追われる美女の事情(わけ)
第2章 追われる女
 それは地下道の出口付近に立っていたあの女だった。うつむき加減だったから顔をよく見なかったが、間違いない。

「助けてくれない? 困っているの」

 早口で繰り返す。美しい外見に似合う、若くて張りのある声だ。生意気さと可愛らしさと、大人の女の艶がある。

「どうかしたのか?」

 見ず知らずの中年男に、いったい何の用なのかと警戒しつつ聞いてみる。

「契約者の……ええと、変な男に付き纏われているんです。助けて欲しいの」
「変な男?」

 女の背後に、それらしき人物は見えない。相変わらずの、ひっそりした昼間のラブホ街があるだけだ。

 すでに神岡には、この年若い美女の正体がわかっていた。だから彼を騙すつもりで演技をしている、そう思った。

 ラブホ街をうろうろしている、金を持っていそうな男へ、困っているフリをして近づき、あとから怖いお兄さんたちがやってきて「俺の女になにしてんだ」と凄まれ、金をせびられる。いわゆる美人局ってやつだ。

 ……だが、俺はまだ何もしていない。もしも美人局ならば、決定的な現場を押さえねば恐喝が成立しない。
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