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池袋ウエストゲート・ラブホテル〜追われる美女の事情(わけ)
第2章 追われる女
 閉じていたまぶたが開く。つけまつげとアイメイクの効果で、大きな目がさらに大きく、美しい切れ長の、蠱惑的な瞳が彼を見つめる。

「ちょっとヤバかった」
「そうだな。諦めてくれて助かった。どこの誰なのか知らないが、面倒ごとは願い下げだからね」
「そうじゃなくて」

 女の目がフッと笑う。

「さっきのキスが。ヤバかった。キス、うまいですね」
「……それはどうも」

 場違いな褒め言葉に苦笑する。

「あいつ、戻ってくるかもしれない」
「ああ。今のうちに……」

 逃げようと言いかけた神岡の唇に、女の柔らかな唇が触れた。

「助けてくれてありがとう」

 彼の首にしがみつき、甘くかすれた声でささやく。

「お礼をしたいな。ねえ……いいでしょう」

 ささやきながら、暗がりの奥へと、神岡の腕を引く。彼らが咄嗟に隠れたのはラブホテルの入り口だ。

「ねえ早く。あいつが戻ってくるから。あきらめてどこかへ行っちゃうまで、時間を潰しません?」

 ……さて、どうするか?

 この女の魂胆は見え透いているが。美人局じゃないのはわかった。
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