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僕の愛する未亡人
第13章 欲しがる未亡人 本間佳織②
「冷たくて、気持ちいい」

ぽつり、と佳織が絞り出すように声を出す。自分を抑えたつもりの台詞だった。
だが、正直な気持ちでもあった。

「ほら、やっぱり…。熱あると思います」

佳織はようやく、冴子と向き直る。
誰もいない更衣室で、ロッカーに向かって冴子の背中を軽く押した。

「え?」

冴子が突然のことに短く声を上げる。冴子のバッグがドサリと音を立てて床に落ちた。
佳織は冴子の体を抱きしめる。まるで、その官能的な香りを独占したいと懇願するように。

「だ、大丈夫ですか…。体調悪いんじゃなくて、何かあったんですか…?」

こんな大胆な行動に出る佳織に対しても、冴子は心配そうに声をかける。

「辛い? 誰かに何か言われました?」

冴子は佳織の髪を指で梳き、反対の手で背中を撫でる。それは、先輩と後輩の関係を越えているからこその手つきだった。
佳織の胸の奥がむず痒くなる。――思わず。佳織は唇を冴子の首筋に押し当てた。

「ん……」

意図せず漏れた冴子の声。その小さな反応が、たまらなく、嬉しかった。
この時間に残っている社員が少ないとはいえ、誰が入ってくるかもわからない更衣室で、佳織は幾度も首に唇を押し当ててしまう。

「ん……ふぅ……本間さん……」

冴子の声が、緊張を孕みながらも柔らかく響く。耳にかかる甘い声、そして甘い香水の匂いに、佳織の頭がぼーっとしてくる。
さらに佳織は、反応を確かめるように、ボタンの留まってないコートの内側に手を軽く滑らせる。
唇を首筋に押し当てたまま、冴子の締まった腹の辺りを指先でなぞる。さらには爪を立てるようにして、太ももの辺りまでゆっくりと引っ掻いた。
スカート越しに震える体の感触――真面目な佳織が冴子を相手に暴走してしまいそうだった。

「――ん、本間さん……。ここ、会社」

声を震わせながら、冴子が佳織の耳元で囁く。

「……もう。体調悪くて、甘えたくなっちゃったんですか? このあと予定あるのに、意地悪」

冴子は我慢できなさそうに、佳織の体を抱きしめ返す。
その態度に佳織も、冴子のコートの中で腰に手を回してしまう。

「行っ……ちゃうの」

絞り出すようにして、喉の奥から佳織は声を出した。
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