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僕の愛する未亡人
第6章 はじめての愛撫
冴子との時間はあまりに濃厚だった。
それに――以前借りたDVDのことも思い返す。
冴子が外回りの同行など、仕事を増やしてくれたおかげで、何とか仕事に集中することができたのだが――

「いっ……」

金曜日、理央の席と佳織の席の間に立ちながら、理央に週明けのことを話す冴子が、突然唸るように声を出した。
理央の肘が軽く、冴子の腕に当たっただけだった。
その声は理央と佳織にくらいしかわからないように見えた。佳織も理央も、その声に気づいて冴子を見た。
理央は改めて、左に立つ冴子を見上げる。

青いストライプのシャツに、グレーのテーラードジャケットを羽織っている。細身のシルエットは、冴子の長い手足をすらりと引き立て、腰のラインまできっちりと絞り込まれていた。タイトスカートは膝上で、黒のストッキングとパンプスが知的な印象を際立たせる。
普段なら第一ボタンまできちんと留められているシャツは、今日はほんのわずかに胸元が開いている。だがその隙間を覆うように、シルクのスカーフが柔らかく巻かれ、首元からシャツの中へとしまわれていた。

理央の視線はどうしてもそこに吸い寄せられる。昨日は、スカーフを巻いていなかったはずだ。
誰か別の痕が――その布の下に隠されているのだと、嫌でも想像してしまう。そして、軽く肘が当たった程度で痛む痕が他にも刻まれているのだろう。

冴子は何事もなかったように、理央に視線を向けて話を続けていた。
話を粗方終えたあと、理央は冴子を連れて、非常階段を降りて、下のフロアへ向かう。
ここは、先日佳織とのあの出来事があった保管庫や、広報宣伝部が使う倉庫、会議室などが並ぶフロアだ。人は誰もいないようだ。

「どうしたの、こんなところまで連れてきて」

不思議そうに、冴子は尋ねる。
理央は少し言いよどみ、視線を逸らした。

「……さっき、ちょっと腕に触れただけで痛そうにしてたから。大丈夫かなって」

冴子は一瞬きょとんとしたあと、ふっと笑みを浮かべた。

「あら。心配してくれたの?」

「だって……首も」

「むぅ」といつも通り口を尖らせて冴子の顔を覗き込む。
冴子は苦笑する。首に巻いていたスカーフが、衣擦れの音を立てながらほどかれていった。
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