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魅惑~甘く溺れる心と身体。
第20章 愛される資格。

 そうしたら、唯斗さんの腕があたしを包み込んだ。
 抱きしめられてしまう。


「ゆ……」
「ああ、君は本当に可愛いな……」
 あたし、しっかり唯斗さんの両腕に閉じ込められてます。

「でも、朝食と昼食を食べ損ねたでしょう? 身体に良いわけはないんだ。せっかく作ったし、食べてほしいな」
「……はい」
 頷けば、唯斗さんはようやくあたしを解放してくれた。


 ――んだけどっ!
 唯斗さんの手がスプーンを取って、スープを掬った。
 しかも息を吹きかけてスープを冷ましているわけで……。


「はい、あ~ん」

 口元に差し出された。

「へっ?」

 もしかして、またですか?

 これって、デジャビュ?


「いいです! 食べられます!!」
 慌ててスプーンを奪おうとしたら――。
「澪ちゃん、俺はね澪ちゃんを甘やかしたいんだよ、お願いだから」
 唯斗さんにお願いされた。
 でも、でもね。
 勘違いしちゃいけない。
 あたしはお母さんに捨てられた。
 厄介者なんだよ。
 いつまでもこの優しさに甘えていちゃ、いけないんだ。

「っつ! ――あたし、厄介者なの……お母さんに捨てられるくらい邪魔者でっ!」
 悲しいけれど、これが現実。
 だからあたしは首を振った。

「澪ちゃん! 悲しいのは判るけれど、自虐は許さないよ? 俺が愛している女性を貶され、蔑まれるのは悲しいからね」
 あたしが自分を否定する言葉を、唯斗さんは被せて話した。


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