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魅惑~甘く溺れる心と身体。
第21章 告白~許しを乞うて大好きな人と一緒に。

 あたしは固唾を呑んでお父さんの話を待つ。
 カチ、コチ。
 静かな空間に時計の秒針が時を刻む。
 その中で、お父さんはようやく決心したのか、大きなため息をついて話しはじめた。


「母さんが家を出て行った原因は……わたしにあるんだよ」
「――っへ?」
 思ってもみなかった内容に、あたしは間の抜けた声を上げた。

「お母さんが出て行った原因?」
「その原因は――」
 お父さんが口を開いた。
 ごくっ。

「原因は?」
 緊張で口内に溜まった唾を飲み込み、オウム返しに訊ねるあたし。
 さっきとは違った緊張感が周囲を包み込む。


「原因は……」
 お父さんはとても言いにくそうに話す。
 そんなに言いにくいことなの?
 もしかして、お父さんが不倫していたとかいうオチ?
 お母さんの他に愛している女性が――?
 もしかして同僚の女性とか?
 患者さんかもしれない。
 人気があるから――。
 その女性との不倫がバレたとかそういうことかな?
 未だに言いにくそうにしているお父さん。


「澪ちゃんのことを、真彩(まあや)さん以上に想ってしまったから――」
 唯斗さんがお父さんに代わって答えた。

 ――んだけど……。


 何かおかしなことを聞いた気がする……。
 真彩っていうのはあたしのお母さんの名前。
 あたしのことを、想う?
 それって……お父さんの子供として、当然のことじゃなくて?


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