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魅惑~甘く溺れる心と身体。
第28章 エンゲージリング
「ゆいとさ……」
いったいどうしたのかと顔を上げれば、あたしの左手をそっと包まれた。
そうかと思えば、あたしの薬指はシルバーのリングを纏っていたんだ……。
そのリングは小さなダイヤモンドが三つ嵌め込まれていて、照明に照らされて、その存在を強調するかのようにキラキラと輝いていた。
「えっ? あの、これっ!」
まさか、エンゲージリング?
ううん、そんなはずはない。
あたしなんかに婚約指輪を用意するなんて有り得ない。
だってあたしにはそんな素敵なものを贈られる価値なんてない。
だから絶体に違う!!
自惚れないよう、あたしは一生懸命自分の期待を打ち消す。
「エンゲージリング。一緒にいようって約束しただろう? 俺の気持ち、こんなモノくらいしか証明できないのは悔しいけどね」
唯斗さんは眉尻が下がってちょっぴり寂しそうに笑う。
――っつ!
「うそ……そんなはずない……」
「澪ちゃん?」
「あたしに、こんな資格、ない……のに……」
近い未来、あたしは唯斗さんと離れ離れになる。
この恋は絶体に上手くいきっこない。
唯斗さんは唯斗さんの人生を選び、別々の道を歩んでいく。
嬉しいのは今だけ――。
だから期待しちゃ、いけないのに……。
「こんなの、ダメだよ……」
あたしを期待させないで。
お別れの日が余計に辛くなるだけだから……。

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