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はなびら
第1章 はなびら
「朱里?」
屈んでその顔を覗き込んだ。

朱里は、笑っていた。

「はなむけってなんだよ」

尋ねても朱里は笑っている。

バラ疹をという言葉をスマホで検索するあいだ、脳内で朱里の体の花びら模様と自分の手首の紅い文様がオーバーラップした。

はなむけ?朱里から俺に・・もしかしてこれは、感染する湿疹か何かなのか?

検索結果が表示された。
恐ろしい二文字が、矢崎の目に飛び込んだ。

───梅毒

<梅毒とは、梅毒トレポネーマという病原体により引き起こされる感染症で、主にセックスなどの性的接触により、口や性器などの粘膜や皮膚から感染する>

朱里が立ち上がり背を向けるのを目の端でとらえたが、矢崎はその場から動くことができなかった。視線はスマホの画面に張り付いて離れない。

<梅毒の徴候や症状は進行に応じた三段階でそれぞれ大きく異なる。自然完治と誤解するような潜伏期を挟みながら、病状が徐々に悪化していき、最終的に死に至ることもある>

<第一段階では性器や口の中に小豆から指先くらいのしこりや、ただれが見られる>

「なんだって?」
矢崎はスマホを握り締め、画面を睨み付けた。
雪子の陰部のしこり、西野の口内のただれを思い出した。

<第二段階では、と言われる薔薇文様と言われる花びらのような発疹(バラ疹)が手のひら、足の裏、体中に広がる>
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