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はなびら
第1章 はなびら

「朱里、今日この後・・」
言いかけた時朱里が突然席を立った。
「え?」
慌てる矢崎をよそに朱里は荷物を手にまとめた。
「今日はもう帰るわ。あなたの顔が見たかっただけだから」
矢崎はつられるように席から立ち上がった。
なめらかな肌にちりばめられたあの花びらを、もう一度見たい。その衝動が矢崎を突き動かした。
慌てて会計を済ませて朱里を追った。手を取ってエレベーターホールのほうに引き入れ、朱里の頬に手を添えた。上の部屋はすでにおさえてあった。
矢崎は以前抱き合った時の肌の熱をまた呼び起こそうと朱里の唇を親指でなぞった。
朱里は矢崎をじっと見つめ、矢崎の手首をそっとつかんで引き離す。
「あら。これどうしたの」
矢崎の手首の内側に、朱里が目を止めた。
「あれ?なんだろう。べつになんともないよ」
腕時計の陰に隠れて、赤いまだら模様が見えた。
「花びらみたいな形ね・・もしかして・・・バラ疹?」
朱里が眉根を寄せて矢崎に尋ねる。矢崎にはいったい何のことを言っているのかさっぱりわからなかった。
「矢崎さん、あなた、結婚したそうね。これが私からのはなむけってところかしら」
朱里は矢崎の手首の紅いしみを見つめてそう言うと、両手で口を覆って、しゃがみこんで肩を震わせた。
言いかけた時朱里が突然席を立った。
「え?」
慌てる矢崎をよそに朱里は荷物を手にまとめた。
「今日はもう帰るわ。あなたの顔が見たかっただけだから」
矢崎はつられるように席から立ち上がった。
なめらかな肌にちりばめられたあの花びらを、もう一度見たい。その衝動が矢崎を突き動かした。
慌てて会計を済ませて朱里を追った。手を取ってエレベーターホールのほうに引き入れ、朱里の頬に手を添えた。上の部屋はすでにおさえてあった。
矢崎は以前抱き合った時の肌の熱をまた呼び起こそうと朱里の唇を親指でなぞった。
朱里は矢崎をじっと見つめ、矢崎の手首をそっとつかんで引き離す。
「あら。これどうしたの」
矢崎の手首の内側に、朱里が目を止めた。
「あれ?なんだろう。べつになんともないよ」
腕時計の陰に隠れて、赤いまだら模様が見えた。
「花びらみたいな形ね・・もしかして・・・バラ疹?」
朱里が眉根を寄せて矢崎に尋ねる。矢崎にはいったい何のことを言っているのかさっぱりわからなかった。
「矢崎さん、あなた、結婚したそうね。これが私からのはなむけってところかしら」
朱里は矢崎の手首の紅いしみを見つめてそう言うと、両手で口を覆って、しゃがみこんで肩を震わせた。

