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オトナのクリスマス
第1章 オトナのクリスマス
クリスマスイブの夜。

綾乃は親友の里緒菜と、スカイツリータウンにある世界のビール博物館で豪快にベルギービールを煽り、盛大に盛られた肉料理を味わっていた。

「イブを女二人で過ごすのもいいけどさ・・なんか物足りなくない?ホストクラブ行こうよ」

一生独身を決め込み、自由奔放な生活をしている美容外科医の里緒菜と、シングルマザーとして七歳の息子を育てる薬剤師の綾乃。二人は大学病院で知り合い、正反対の性格ではあるが、不思議と馬が合った。

生活スタイルが全く違うがゆえにライバル心が生まれることもなく、互いを心から応援できるのがいいようで、かれこれ十年ほど親友として関係が続いている。

「ホストクラブは・・もういいかな」

里緒菜には秘密にしているが、じつは綾乃は、初めて里緒菜に連れられて行った店で出会ったホストの男と、その日のうちに一夜を共に過ごしてしまったのだ。

さらに情けないことにその男のことを忘れることができず、この四か月の間悶絶するような苦しみを味わう羽目になった。

幼い息子がいるシングルマザーがホストに現を抜かすなんてもってのほか。

綾乃はひたすら時間の経過とともに思いが凪ぐのを待つべく仕事にまい進してこの数か月を過ごした。

ありがたいことに師走に突入し、職場は繁忙期に入り、公私ともに忙しくなったおかげで、もはや恋愛どころではないときっぱり気持ちを切り替えることができたところだった。

もう二度とあんな苦しい経験はしたくない。

「それに里緒菜は明日、大学生の彼氏と過ごすんでしょう」

「明日は明日、今日は今日よ」

里緒菜はキラキラ笑った。

「綾乃は明日はどう過ごすの」

「樹が、サンタクロースが来るからクリスマスの夜はお家にいる、って言うの。だから明日は息子と二人で家で過ごすわ」

実家に息子を預けてクリスマスを楽しむのも、今晩限り。

「サンタクロースの役、私がしなくちゃいけないしね」

隣りの座席に置いたプレゼントの包みを指さして綾乃は言った。里緒菜との待ち合わせの前に電気店に寄って購入したものだった。
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