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あなたに抱かれたい
第5章 父が連れてきた女

そこへ、ひょっこりと顔を出したのが久美子と同期の赤坂留美子だ。
休憩室の片隅のテーブルに座っている久美子を見つけると、呼んでもいないのにズカズカと隣のテーブルに腰かけた。

「久美子さんお久しぶり」

隣のテーブルに腰を落としたあとで「お邪魔だったかしら?」と拓哉にお伺いを立てた。

「いえ、ここは休憩室ですからね、どこに座ろうとご自由に」

そう拓哉が言ってあげると、そうよね自由よねと、拓哉の存在を無視するかのように久美子に「ちょっと、聞いたわよ。あなた結婚をするんですって?」と、どこから聞きつけたのかそんなことを言った。

「ええ…まあ…」

「あなたを射止めるなんて幸運な男ね。ね、教えなさいよ、どこの誰なの?」

まさか久美子と同席している拓哉が久美子の相手だと思わず、誰と結婚するのか執拗に訊ねてきた。

「紹介するわ。篠塚拓哉さん。この方と結婚するの」

「えっ?!えっ?」
驚いた留美子は久美子の耳に口を寄せて「本気なの?オジサンじゃない」と口を耳元に寄せただけで小声でしゃべらずに普通にしゃべるものだから拓哉にも筒抜けだった。

「ははは…確かにオジサンだけど、正真正銘、僕が久美子の結婚相手だよ」と包み隠さず拓哉は真実を語った。

「うそっ!やだ!聞こえちゃった?
ごめんなさい、私ったら本音しか言えないから」

「いいんですよ、きっと社内の誰もがそう思うだろうしね」

「久美子さん、あなたもしかしてこちらの篠塚さんと不倫しての略奪婚ってわけじゃ…」

「ははは…何から何まで自由奔放に発言なさるお嬢さんだね
安心してくれたまえ、僕は妻帯者じゃないから」

久美子は、この子にだけは知られたくなかったわと憂鬱な気分になり「あなた、そろそろ行きましょうか」と先に席を立った。

「ん?ああ、そうだね…
赤坂さんとおっしゃいましたか、僕らは有給を取得しているからこうしてのんびりしているけれど、あなたはそろそろ持ち場に戻られた方がいいんじゃないですか?」

部署は違えど、目上の人間として、一言留美子に釘を刺した。

休憩室を後にして、久美子は拓哉に「ごめんなさい」と詫びた。

「謝る必要はないさ、この歳の差ですから誰しもそういう風に思うだろうしね
それは覚悟の上で僕は君と結婚するんだから」

そんな会話をしながら去ってゆく二人を留美子は羨ましそうに見つめていた。
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