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防音室で先輩に襲われて…
第5章 防音室で先輩に襲われて


(さっきの、ゲーム……?)


「勝、ち……わたし、の……?」

 とても勝者とは思えない間抜けた表情で椎名を見る乃ノ花。バクバクと激しい鼓動と…乱れたままの息だけが、先ほどまでの余韻を辛うじて引きずっている。

 果たして最後、自分は口を塞いでいただろうか……。もはや記憶がさだかでないが、椎名が言うにはそうらしい。

「…終わった……?これ、で…?解放して…もらえるんですか」

「うん、解放して " あげる " よ」

 普段の穏やかな声に戻った椎名が、優しい笑顔で答える。

 しかし困った事に、これを聞いた乃ノ花が感じたのは単純な喜びなどではなく…… " 戸惑い " に他ならなかった。

 それを見透かされているからなのか。いつも通りの彼の笑顔でさえ意地悪く見えてしまう。

「続き、したかった?」

「───ッ」

 椎名に問われて、乃ノ花はそんな自分に立ち返り顔を上気させる。

「そんなわけありません!」

 乱された制服を握りしめて叫ぶ。

 照れているようにも見える彼女の反応だが、それは大きな間違いだ。彼女を襲うのは羞恥と、動揺と、裏切られた悲しみ──。

「ハァ…ッ…ハァ…ッ」

「……」

 何か…何か言わなければいけない。目の前の男に相応しい罵倒の言葉を。憎悪の言葉を…浮かぶかぎり、投げつけなければ。



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