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助教 沙霧
第13章 視線
 羞恥で顔が燃えるように熱い。

(誉さま…申し訳ありません……「誰にも知られてはならない」というご命令が……学問の徒であるこの男によって……守れないことになるかもしれません……)
 
 その異様な様子に押され、言葉を失ったまま立ち尽くしている佐藤の脇をすり抜けるようにして、沙霧は足早に会議室を後にした。廊下を歩く足音が、いつになく乱れている。
 
 女子トイレに駆け込み、個室のドアをロックする。
 激しい呼吸。
 沙霧は震える手でスマートフォンを取り出した。
 誉への、次なる告白。
 
「……今、後輩に、印を見られました。疑われました。
 それなのに、私の淫らな本能は……その視線に、悦びを覚えました。
 私は、もう戻れません。
 貴方からのご命令にに、そして誰かからの視線に、私はこれからも切り裂かれ続けたいのです」

 沙霧は便座に座り込み、自らの膝を強く抱えた。
 壁の向こう側から聞こえる学生たちの笑い声が、今の自分の淫らさをより鮮明に際立たせる。
 沙霧は目を閉じ、誉の大きく無骨な、しかしこの上ない慈悲に満ちた手が自分の背中を優しくなでる妄想に、そのこの上ない至福の感覚に身を任せた。

 夕闇が迫るキャンパス。そこが沙霧にとって神聖な場所であったはずの学内であることもすでに沙霧の意識の中からは消え去り、沙霧の手は少しずつ、しかし確実に秘めた熱を帯びたままの下腹部に伸びていった。

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