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助教 沙霧
第20章 朝の日課 ~奴隷の証~
 午前七時、冬の冷徹な静寂を切り裂くアラームの音に、沙霧は意識を覚醒させた 。以前なら迷いなく上体を起こしていたその動作は、今や一つの「儀式」としての重みを帯びている 。彼女はすぐには身を起こさず、冷たい空気の中で、自らの肉体に刻まれた昨夜の残滓を確かめるように深く息を吐いた 。

 二十九歳、助教として教壇に立ち、みずからも古典和歌の研究者として「氷の才女」の異名をほしいままにしてきた沙霧。しかし今の彼女は、それと同時に会ったこともない主に支配される奴隷となったのだ。沙霧は震える指を伸ばし、枕元のスマートフォンを手に取った。それは彼女をもうひとつの現実へと誘う「光の首輪」でだった 。

 画面には、深夜に届いた「誉」からのメッセージが、静かな命令として居座る。

『沙霧、目覚めましたか。今日という一日の始まりに、私が貴女の魂と肉体に課した『証』を刻むのです。それは、貴女がどれほど高潔な言葉を並べようとも、その芯は私の支配下にあるという事実を忘れないための楔です』

 沙霧は、熱い吐息とともにその文字をなぞった。彼女はベッドから這い出すと、シルクの上品な寝具を脱ぎ捨て、全裸になって窓際の姿見の前に立った。鏡に映る自分の肢体は、自らの血で烙印を押したあの夜から、一晩ごとに確実に見知らぬ女のものへと変容しているように感じられた 。

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