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助教 沙霧
第21章 ある夜の命令
 添えられていたのは、都心の喧騒から外れた、古い洋館の一室を指す住所だった。沙霧の喉が、引き攣るように鳴った。

 ついに、その時が来る。文字という皮膜に守られた支配が、物理的な重みと熱を持って、彼女を蹂躙しに来るのだ。その場所を想像するだけで、下腹部には重だるい熱が溜まり 、指先は快楽の震えを止めることができなくなった 。

(主さま……私は、壊されたい……貴方の指先で、この忌まわしい理性を粉々に砕いてほしい……)

 沙霧は、ゆっくりと椅子から降り、ラグの上に膝をついた 。四つん這いになり、頭を低く垂れる。その姿勢は、まだ見ぬ主への、そしてこれから始まる過酷な調教への、絶対的な服従を誓うためのものだった 。

 脳裏には、和泉式部の歌が、血を吐くような響きで繰り返される。

   あらざらむ この世のほかの 思ひ出に

 死後の思い出にするために、もう一度だけ貴方に逢いたい。その切実な願いは、今の沙霧にとっては、誉という名の暴力的な理解者に、心も体もズタズタに引き裂かれたいという渇望と同意義だった 。

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