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敗者の美酒
第1章 2014年 厳冬
ふんころがし
あなたが今朝 オレンジジュースを飲んだグラスで
俺が今 ワインを飲んでいる
あなたが昨日 蚊に刺されたあとを拭いたティッシュを
俺が今 片付けている
あなたが昨日 ふざけて飛ばした輪ゴムを
俺が今 ゴミ箱に捨てた
あなたが昨日 持って行ったCDの隙間を
俺は今 見つめている
あなたと一緒に包まったタオルケットを
今俺が一人で おなかにかけている
あなたが飛ばした石鹸カスを
俺は明日 洗うだろう
あなたが嫌がったカナブンの死骸を
アリが数日後 消滅させるだろう
あなたが綺麗だと言った ヘルメットを
俺は週末 かぶるだろう
あなたが言った 泣きそうになったテレビのワンシーンを
俺は思い出して 泣くだろう。
そして
あなたが眠る町に 綺麗な朝が来るように
俺は地球を回すよ
あなたが楽しい事と 俺を思い浮かべるように
俺は朝を 君に朝を
届ける準備をする