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美咲と雪乃
第3章 山﨑
朝方、畑仕事をしている美咲は道端を歩いている男性に気がつき挨拶をした。

「あ、おはようございます」

歳は60前後だろうか、自宅から500m程離れた場所に住んでいる山崎という名前の初老の男性。
無愛想で美咲の挨拶にも刺すような視線で反応する。
「おい、それじゃあダメだ」
「え?」
愛想笑いで返していた美咲は何のことか分からずキョトンとした態度を見せてしまう。
そんな美咲に少し間を置いたかと思うと再び声を投げかける。
「おめぇ、そんなんで野菜が育つと思うのか?小さな鉢でやるのとは訳が違うぞ」
「…あっ、………はい…」
「畝や水捌けのやり方から教えてやる、それにこんな小さなスペースではダメだ。この畑、一反はあるだろう。全て耕せ」
「え?あっ、でも、2人分あれば十分ですので……」
「聞こえたか?」
「は、はい……」
やや威圧的な言動に同調してしまった美咲だが、韮崎も軍手を填め鎌を手にすると畑に降りてきて草毟りを始める。
「あっ、あの、私がやりますから」
「1人だと見とれんから口を出したんだ、先ずは耕すぞ」

山﨑の無駄のない仕事はとても手早く、畑の耕しから、畝や水捌け、肥料の馴染ませ方など5日程で整備は完了。
小松菜・ほうれん草・ピーマン・カブ……。
1ヶ月程で育つ成長の早い野菜は順調に収穫、村の人たちと時期がズレたり栽培していない野菜と交換しあう。
「全て耕せ」
あの時の山﨑の言葉の意味を理解し、感謝と共に尊敬の念を抱くようになる。

相も変わらず無愛想な山崎ではあるが、美咲の心情は変化していった。
最初は高圧的にも思えた態度も思いやりのある優しさがあり、自然体の笑顔で接せるように。
「其処までは申し訳ないです」
「別にやりたいからしとる、申し訳なくなんて思わんでいい」
畑作業だけでなく家の修繕まで無償でやってくれ、美咲の気持ちは無意識の内に山﨑はただの隣人ではなくなっていた。
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