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デーンハイト家の戯れ
第1章 はじまりの宴
湖のほとりに構えたその屋敷は、三人のメイドと、デーンハイト家長男・ウェインと次男・エルナスが一緒に住んでいる。
ウェインが情報を繰り次の販路を整え、エルナスが町に降りて交渉をする。そうして生計を立てていた。

「ルーシァ、今夜はお前がうちに来て10年の節目だ。俺が許す、盛大に祝おうじゃないか」

声を挙げたのは、ウェインだった。
メイドたちがわあ、と歓声を上げるのをよそに、ルーシァと呼ばれた女――彼女もメイドの一人だが――は慎ましやかに俯きながら小さく頷く。

「ウェイン様、わたくしにはもったいないお話ですわ」

美しい亜麻色の髪を結わいたルーシァは、お辞儀をして部屋の掃除に戻ります、と消えそうな声で言いその場を離れる。
ウェインはその様子を見届けた後、不機嫌を隠さずにむっすりとしたまま残りのメイドたちに一瞥を向けた。

「ルーシァの意思は関係ない、いいなお前たち。今夜だ」
「「はい、ご主人様」」

二人のメイドはしっかりと返事をして場に戻る。
テーブルの上で印書を書いていたエルナスが、小さく笑う。

「兄貴は言い出したら聞かないからね。……オレは午後から夕方に掛けて町に降りてくるよ。間に合うと、いいのだけど」
「お前は別にいなくてもいいけどな。俺の邪魔はするなよ」
「……はいはい。ごちそうぐらいは、残しておいてくれよ」
「残ってたらな」

兄弟は特段仲が悪いでもなく、また良いわけでもなかった。
エルナスが空気を読むのが得意なだけで、こうしてウェインは好きに自由に振る舞うのが常だった。
書簡に最後に目を通したエルナスが、書類をトントンとテーブルで整えて封書に入れ立ち上がる。
ウェインは腕組みをして壁にもたれてそれを眺めていたが、興味を失ったのか壁から背を引きはがして大広間を後にした。
その靴先が向かうのは庭のローズガーデンの東屋だ。
決まって暇になるとウェインはここで寝転がってくつろぐのが日常だった。
くあくあと欠伸を一つする様は自由気ままな猫そのものである。
クッションのきいたソファの上で肘をつきながらそのまましばらくを自堕落に過ごすことに決めたようだった。
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