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スパイ少女は奴隷になる
第1章 プロローグ
嶺二くんは見た目の人を寄せ付けない雰囲気に反して、すごく優しい青年です。こうやって体の小さい私を気遣ってくれます。それに私が飛び級して進学しているがために大学内で浮いていないかと、心配してくれたりもしています。
そして、私は……そんな彼を騙しています。私をスパイとして育てた施設。その運営をする他の企業に情報を流しているのです。今の所、幸いなのか重要な情報は出ていませんが、優しい彼を騙しているという状況は、胸に針が刺さっているような息苦しさを私に感じさせていました。でも、馬鹿な私には他の生き方なんてわからなくて、ただ流されるように新しい生活の両面を過ごしていました。
しばらくして、私たちは寮にたどり着きます。寮と言っても、嶺二くんのような人が入る場所ですから、私のような貧乏生まれが想像するようなものとは格が違います。その外観はタワーマンションそのもので、それが丸ごと学生寮なのです。さらに、部屋に入れば、そこはモダンな家具に囲まれた空間で、一部屋に2人で住んでいるというのが、気にならないほどに広々としています。
「悠太、悪い。ちょっと野暮用で出てくる」
「あっ、う、うん……」
寮の一室に帰ってくるなり、彼はスマホの通知を一瞥すると、また出ていってしまいました。すぐに玄関が閉まる音がして、静けさが部屋に広がります。そこで私は音の残響がなくなったのを確認すると、ひっそりとシャワールームに入りました。彼と同居中、女性だとバレたら寮の部屋を変えられてしまうでしょう。だから、裸を見られないためにも、私がシャワーに入るのは、嶺二君がいない時しかないのです。
思えば2日ぶりのシャワーです。私は、無数の水滴の音を聞きながら、シャンプーをつけて丁寧に髪を洗い始めました。瞬く間に柔らかい泡が立って、金木犀の柔らかい香りが広がりました。私は髪の手入れをする時間が好きです。それは男性として偽りの生活をする中で唯一女の子らしくできる時間だからです。それに、男装のために肩にかからないほどの長さではありますが、サラサラの髪は私の数少ない好きなものでした。
そして、シャワーを終えて、蛇口がキュッと悲鳴を上げると、私は浴室から出ました。それが、この平穏な日常の最後になるとも知らずに柔らかいタオルに包まれて、私は油断しきっていたのでした。

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