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スパイ少女は奴隷になる
第9章 狂騒のあとに
 「あの、あ、ありがとうございます……」

 私はくすぐったい気持ちでモジモジとお礼を言います。ですが、嶺二様は何も言わずに、今度は私の体を洗い始めました。嶺二様の硬くて大きな手が私の全身を這い回り、私は敏感な部分に手が触れるたびに、抗いがたく甘い声を漏らしてしまい、温まって赤くなった肌をますます赤くしてしまいます。鏡越しに写った私の姿は彼の大きな手によって奏でられる楽器のようでした。そして、あらかた全身を洗い終えると、嶺二様は背中を優しく擦りながら私に話しかけてきます。シャワーの音を背景に低い声が浴室に響きます。

「細いな。美柑、ちゃんと飯は食べてるのか?」
「あっ、えっと……、はい、嶺二様のところに来てからは……」
「そうか……。その前はどうだ?スパイの養成施設にいた頃だ」
「えと、その……。養成施設だと、運動ができない子は罰として食事を抜きにされることが多くて……、その……私はいつもお腹を空かせていた気がします」

 背中の手が数秒止まって、再び動き始めます。鏡はいつのまにか曇っていて、私たちの姿はぼんやりとしか写りません。

「美柑、俺は鶏ガラみたいな女は抱く気にならないからな。せいぜいそれ以上痩せないように、しっかり食べろ」
 「え……?あ、はいっ」

 嶺二様はそう言って、私の体を流してくださいました。どうして今日は普通にお話ししてくれるんだろう……、どうしてこんなに優しくしてもらえているのだろう……、そんな風に思って困惑していると嶺二様から指示が飛びます。

「ほら、次はお前が俺の背中を流せ」

 私はボディソープを両手に掬って、泡立てると、椅子に座っている彼の後ろに膝をつきます。

「失礼します……」

 そう言うと、おずおずと手を伸ばして、彼の大きな背中を丁寧に洗い始めました。

「今から話すのは俺の独り言だ。だから、別に返事しなくていい」

 彼が私の方を一瞥します。私が無言で頷くと、再び話が始まります。
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