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スパイ少女は奴隷になる
第10章 羞恥のお手伝い
「あっ……、あ、ここ、だめっ……です。人に見られちゃいます」

 私は絞り出すような声で精一杯懇願します。誰かもわからない通行人に見られてしまうかもしれないのが、怖くてたまりませんでした。嶺二様はそんな私の耳元で上機嫌であるのを示すように、軽やかに笑いました。

「窓が無理なら、ベランダの掃除だな 」

 じわっと目尻に涙が溜まり、必死に首を横に振ります。でも、それと同時にお腹がキュンとしました。嶺二様の意地悪に反応してしまったのです。

「あ、ごめんなさ……あ、窓がいいですっ。窓拭きさせてください、おね、お願いしますっ」
「だったら、早く始めろ」

 そう言って嶺二様は背後の椅子に座り、掃除をする私を監督し始めました。確かに感じる目線を背後に布巾を濡らして、戸を掃除し始めます。まずはしゃがんで下の方からです。そうすると、私のいる場所は死角となって外の目線から守られるのです。
 ですが、永遠に下側を拭き続けることはできません。

「もう下の方はいいだろう」

 その一言で、私は、ついに安全な場所から出なくてはいけなくなってしまいます。深く息を吸ってから、返事をします。

「わ、わかりました……」

 いつもより小さな自分の声が響きました。そして、恐る恐る立ち上がります。すぐに外を歩く数人の人影が目に入って、引き攣った悲鳴をあげて、後退りしてしまいます。ですが、背後から舌打ちの声がして、すぐさま掃除に取り掛かりました。
 窓を拭いている間、私は外で歩き回っている人々の一挙手一投足に体を震わせて、神経を張り詰めさせていました。そのせいか、全く掃除が進まず、余計に時間がかかって危険が増していく悪循環に陥ってしました。

「おい、美柑」
「は、はいっ」

 張り詰めた糸を弾くような嶺二様の声に跳ねるように反応して、答えます。
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