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影を背負った愛~足りない愛を、君に
第30章 父の日の前夜 ~夢の余韻~(start-1m) 健治編②
美和子の視線がゆっくりと健治に向けられた。
優しかった顔が、みるみるうちに怒りで赤く染まっていく。

「大内さん……あなた、47歳でしょう?
バツイチで、息子さんがいて……
過去に相当ひどい女性関係をしていたと、彩香から聞いていますよ!?」

美和子の声が震えた。

「大事な娘に……! 彩香は恋愛もろくにできなくて、ずっと傷ついてきた子なんですよ!? それなのに、あなたみたいな……!」

ガタッと立ち上がった美和子は、迷わず健治の前に歩み寄り、


パァン!


鋭い音がリビングに響いた。
美和子の右手が、健治の左頰を強く打っていた。

「母さん! やめて!!」

彩香が慌てて飛び起き、母の腕を掴んだ。

目には涙が浮かんでいる。

健治はビンタを受けた頰を押さえもせず、深く頭を下げた。
深く刻まれた皺の間から、静かな声が漏れる。

「……怒るのは当然です。申し訳ありません、美和子さん。
俺の過去は最低でした。軽率に女を扱い、家族を壊した。
彩香を愛する資格など、本当はないと思っていました。
それでも……彩香を本気で愛しています。この子を、責任を持って育てます。
彩香とも、ちゃんと家族になりたいんです」

健治の声は低く、けれど真摯だった。

美和子は唇を強く結び、しばらく二人を睨んでいたが、
看護師としての冷静さが徐々に戻ってきた。

ため息を一つ吐き、彩香の肩に手を置く。

「……彩香、顔色が悪いわよ。ちゃんと栄養取ってるの? つわりはどう? 
葉酸は飲んでる?」

彩香が小さく「うん……」と答えると、美和子は健治に向き直った。

「大内さん。ちゃんと責任持って育ててくださいね。
妊娠初期は特に安静が大事です。彩香は昔から胃が弱いし、ストレスに弱い子なんです。
仕事も無理させないで。夜はしっかり休ませてあげて。
……あなたが父親になるなら、せめて最低限、それだけは守ってください」

健治はもう一度、深く頭を下げた。

「肝に銘じます。ありがとうございます」
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