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たゆんたゆん
第2章 社員
「…ぁっ…嫌…」

背後から脇の下に手を差し込み胸を犯す社長の手。
ブラウスの上からでもはっきりと太い指が豊かな双山に食いんでいるのがわかる。
掌全体で上から下へ丸い輪郭をなぞるように撫でたあと、下から掬い上げるようにゆっくりと揉んでいた。

「早くしなさい。次に進んでもいいのか? ん?」

「まっ待って下さ…んん!」

美月は泣く泣くペンを走らせるが、ぎゅっぎゅっと強弱をつけて胸を握ってくる手が気になって集中出来なかった。
無理だ――こんなセクハラされながら業務を終わらせるなんて。
自分の頭上以外明かりの消えた暗い社内を見回して、社長――この男が顔を覗かせた時に逃げ出せば良かったと深く後悔した。

「おっと、時間だよ。美月君、もう終わりにしなさい。そもそもうちでは残業などしてはいけないことになっているのに、全く君は真面目だなぁ……体に似合わず」

「きゃ!」

ペン先にインクが滲む。
言葉の最後で痛い程に強く鷲掴みにされ、美月は思わず胸を揉む社長の手に自分の手を添えた。

「あ、あの、社長…」

「美月君、君は実家暮らしかね?」

「へ? …い、いえ…。あの、」

放して下さいと言いかけた時だった。
椅子ごと背中から倒れ、かと思いきや腕を掴まれ再び立ち上がり。
紙とペンが床に落ちる音がしたかと思うと、先ほどまで自分が使っていた明かりの照らされた机の上に押し倒されていた。

「一人暮らしなら好都合。なんなら今日はわたしの家に泊まってもいいぞ?」

美月の視界に現れた男の顔は逆光で表情が見えない。

「社長!? 何するんですか! やめて下さい!」

「君に拒否権はないよ。時間どおりに終わらせられなかったら続きをすると言っただろう?」

「嫌です! 放して!!」

「存分に叫ぶといい。今日は警備員も休ませたからね」

「イヤ! いやぁぁ!」

「美月君、もしも君が抵抗するなら本物のレイプになるけど」

「何言って…!」

両手首を掴み顔の横で固定すると、社長は美月に顔を寄せた。
鼻をつく中年期独特の臭いに美月は顔をそむける。
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