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お題小説第8弾『梅雨の暴走』
第1章 梅雨に濡れ…
 7

「啓くんてさぁ…
 前の彼氏と同じ…だわぁ……」

「えっ」
 それは…
 真っ暗闇の絶望の世界に走る、まるで、一筋の光明の言葉。

「…ふぅん、そうなんだぁ…」
 なんとなく、目の色が変わった――

「は、はい、だから、思わず……」
 そう、思わず、そのストッキングに手が伸びてしまったのだ。

「ふぅん、思わずねぇ…」

「あ、は、はい…」

「でもさぁ…」

「え…」

「ストッキングならさぁ、誰のだっていいんでしょう?」

「あ、え、い、いや、ち、違いますっ」

「ウソよ…」

「い、いや、ウソじゃないですっ、ボ、ボクは、お、お姉さんのが…」
 思わず、そう慟哭してしまう。

「え、わたし…のが…」

「は、はいっ、お姉さんじゃないと…」
 なんとなく、開き直れたみたいだった。

「………」
 お姉さんの手が、熱くなった感じがした。

「お姉さんじゃなくて…
 わたしは、悠里…悠里っていうのよ……」
 そう呟き、ボクを見つめてきた。

「………」
 悠里さんの目が、変わった…
 いや、なんとなく、艶やかになったみたいだ。

「ね、ねぇ、そ、そのさぁ…」
 そして、重なる手に力が籠り…

「え…」

「そのさぁ、盗ったストッキングでさぁ…」

「………」

 艶やかな色は、濡れた色に変わり…

「そのストッキングでさぁ…ど、どうするのぉ?」

「え、あ……」

「ねぇ、見せてよ…」

「え、み、見せてって?」

「そのわたしのストッキングでさぁ…どうするのかさぁ…」

 そう囁く悠里さんの顔が、いや、艶々な唇が…
 近寄ってくる――

「あ…」

「…ねぇ……したことあるの?」

「え?」

「キス…」
 ボクは、首を振る。

「………」
 その艶々で、柔らかな唇が触れてきた。

 それは、まるで、悠里さんの心の暴走――

「う…」
 なまめかしい舌先が、絡まってくる。

「ん……」

「はぁ…」
 唇がスッと離れ…

「あ、あぁ、抑えがぁ、利かなくなってきちゃたぁ…」
 それは、悠里さんの慟哭…

「ねぇ…見せてよぉ……」

 まるで悠里さんの瞳は、なぜかボクではない誰かを見ているようだった――

 そうか…
 昔の彼氏なのか――
 


 
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