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万華のむつごと
第5章 二十年後の夏祭り
志保にはそういう、衝動にまかせて破壊的な行動をする癖があった。

じっと立ち尽くして足元の小さな紙きれを見下ろしている志保を見て、透子は胸が苦しくなる想いに耐えきれなくなった。

衝動に駆られて、志保に呼応するように、自分の作品を美術室から持ち出して、教室で思い切りちぎった。そして、ふたりで、紙くずとなった作品を窓から外へばらまいた。


季節外れの夏の雪のように、紙吹雪が舞い落ちる。

それを、志保の兄の健太が、校庭から眩しそうに見上げていた。




そこまで記憶をたどると、透子は現実に引き戻された。摩利支天が、艶やかな瞳で透子を見つめている。

志保が書いた肖像画と、摩利支天がそっくりだった。

「この彫り物の絵を見たことがある」

透子の声が、こみ上げてくる思いで震えた。

「俺の妹が彫った」

「・・・もしかして、健ちゃんなの?」

「ああ。懐かしいな透子」


不意に、涙がこぼれた。
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