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万華のむつごと
第5章 二十年後の夏祭り
「あんた、昼間、祭の準備のとき、俺の背中、じっと見てただろう」

祭の本部の設営のために町会のテントを組んだあと、人目をはばからず半纏を脱いで汗を拭いていたこの男の背中に目を奪われたのは、同じ日の昼のことだった。

美しい摩利支天が、その筋肉の盛り上がる背中に貼りついていた。見事な彫り物だった。

「見せてやるよ」

男は透子の返事も待たずに法被を脱いだ。

「綺麗…」

摩利支天の繊細で力強い瞳に、吸い込まれるような気がした。


直後、その瞳が、透子を過去の記憶へと一気に引き戻した。

昔のある絵の記憶が、その摩利支天と脳裏でぶつかり合って、火花を放った。
息が止まる。


志保───。

彼女は中学校で、成績が悪い問題児だった。

だが美術の授業の作品で見せる稀有な才能は、異様に鮮やかで眩しく、今でも透子の記憶に鮮明に残っているほどだ。
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