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パートタイマーの淫乱人妻・美香~主婦の仮面を脱ぐ午後
第7章 熟れた体~遊びのつもりよ
私はためらいながら、親友の理香に電話をかけた。理香は昔から少し破天荒で、世界を斜めに見ているようでいて、誰よりも他人の寂しさに敏感な人だった。

「もしもし、美香? こんな時間に珍しいじゃん」

スピーカー越しに聞こえてくる理香の声は、いつものように低くて、どこか乾いていて、でもあたたかかった。

「あのね、理香。ちょっと聞きたいことがあって。……理香、前に相席居酒屋みたいなところ、行ったことあるって言ってたじゃない?」

一瞬の沈黙のあと、理香がフッと短く笑う気配がした。

「行ったよ。美香がそんなこと聞いてくるなんて、明日、雪でも降るんじゃないの」

「事務員の女の子に誘われてね、気分転換に行ってみないかって。でも私、そういう場所が全然想像つかなくて。どんなところなのかなって、怖さもあって……」

受話器の向こうで、カチャリとライターの音がした。煙草をくゆらせる理香の横顔が目に浮かぶ。

「相席の場所ね。あそこは、昼間の自分を脱ぎ捨てられるところよ」

理香の声は、夜の湖のように平らで澄んでいた。

「お酒を飲んで、見知らぬ男の人と並んで座るでしょ。するとね、人妻だとかお堅い仕事してるとか、そういうしがらみが全部どうでもよくなるの。自分がただの、名前もないひとつの身体になっちゃう感覚がある」

「……身体?」

「そう。私も一度、はまったことがあってね。お酒に酔って、相手のペースに巻き込まれて、気がついたらベッドの中にいた。頭が真っ白になるくらいセックスして、自分がどこにいるのかも分からなくなるような時間。でも、面白いっていう感覚だけが残った感じだったわ」

理香は少しだけ間を置き、微かに笑った。

「日常を忘れて、知らない世界を覗き見するのはいいことよ。美香ぐらいの年齢だったら、今からでも経験しといたら。でも美香、深みにはまらないようにね。あそこは、引き際を見失うと、あっという間に深い海へ連れていかれちゃう場所だから」

理香の言葉は淡々としていて、だからこそ、余計に私の肌をひやりとさせた。相席居酒屋のことぐらいは知っていた。でも、知っているのと、体験するのでは全く違う。電話を切った後でも私の心は小さく波打っていた。

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