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彼と私の10コの差
第1章 彼と私の10コの差
たくさんの本に囲まれ、そしてたくさんの眼鏡男子に囲まれる。
そこが私の職場だ。

「山本さーん、これ補充でいいですか?」

「うん、お願ーい」

勤めて三年、いつの間にかバイトリーダーにまで昇格していた私。
仕事は好きだからそれはどちらかと言えば嬉しいんだけど。

「やぁーだぁー、爪割れちゃったぁー」

綺麗に手入れされた爪を見ながら愚痴る新人の女の子。
アレも教育しなきゃいけないのかと思うと頭が重い。

「田中さん、爪割れたんなら休憩室で切ってきて」

「えー、せっかく昨日お店に行ってきたのにー」

……じゃあ仕事辞めろよ。

そんな本音を笑顔の奥にしまい、私は店で一番のイケメンを呼んだ。

「鈴木くん、田中さん休憩室に連れてって」

「え、俺がっすか?」

「うん、俺が」

何か文句でもあんの?と言わんばかりに鈴木くんを見上げると、彼は渋々田中さんに声をかける。

「田中さん、爪そのままだと危ないから休憩室で切ろっか」

「いやーん、鈴木くん優しいー!どっかのおばさんとは大違いー」

おいコラ、シフト減らすぞ。


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