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彼と私の10コの差
第1章 彼と私の10コの差
できるならばそんな職権濫用してみたいもんだけど、どうやら私はそういうことができない性格らしい。

「山本さんも大変っすね」

苦笑いしながら私に近づく男の子。
伊藤くんは最近の私の癒しだ。
イケメン本屋と呼ばれるうちのお店の中ではあんまりパッとしない見かけなんだけど、私の中では一番だったりする。

短髪の黒髪。
筋肉質な体。
眼鏡男子には間違いないけど、世間で評される子たちとは少し雰囲気が違う。

「伊藤くんだけが分かってくれればいいよ」

そう言って細マッチョな腕を触った。

……あれ、私職権濫用してる?

「そういうこと言うと誤解しますよ?」

困ったように笑う伊藤くん。
誤解ではないんだけど、何となくそういう雰囲気にしておく。
彼は23才。
私は33才。
さすがに正面きって告白なんかできないし。
しかも断られでもしたら立ち直れない。

「あ、この本片付けておいてくれる?」

そばにあった複数の段ボールの箱を指さした。
雑誌が詰め込まれたその箱は、さすがに慣れた私でも重い。
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