この作品は18歳未満閲覧禁止です

- 小
- 中
- 大
- テキストサイズ
孤独を埋めて、満たして【短編】
第1章 孤独を埋めて
「…先生から。進路希望の書類、明日までに提出だって」
「へえ、わざわざ委員長が直々に?担任も人使いが荒いよねー。俺の進路はー、適当にどっかの大学でも行って、適当に遊んで暮らせればいっかなー」
彼は封筒を受け取りながら、ヘラヘラと笑う。その笑顔を見るたびに、胸の奥が冷えていくのを感じる。
女の子の温もりで身体を満たした直後なのに、彼の瞳の奥にあるのは、凍えるような虚無だけだ。
誰にでも優しくて、誰のことも愛していない。ただ、一人になるのが怖くて、壊れそうな心を必死に守るために、温もりを貪り続けている。
その痛々しいほどの歪みが、なぜだか、酷く鮮明に視えてしまった。
「……可哀想な人」
気がつけば、声が漏れていた。
その一言が落ちた瞬間、成瀬くんのいつもの甘い笑顔が、ガラスが砕けるように消え去った。
「──は?」
次の瞬間、私の手首は骨がきしむほどの強い力で掴まれていた。
痛い、と声を上げる隙さえ与えられないまま、私は半ば強引に、薄暗い彼の部屋へと引きずり込まれる。
バタン、と重いドアが閉まり、世界が二人きりに閉じ込められた。

作品検索
しおりをはさむ
姉妹サイトリンク 開く


