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孤独を埋めて、満たして【短編】
第1章 孤独を埋めて
私は彼の背中に手を回し、その身体をそっと受け入れた。
シーツに沈み込み、互いの衣服の隙間から伝わる彼の肌の熱は、今にも壊れてしまいそうなほど張り詰めている。
「ぁっ……、成瀬…くん…っ…」
「っ…そんな声で…、そんな目で、俺を見るなよ…!」
誰でもいいから温もりを貪っていた彼の、本当の体温。
深く肌を重ね、お互いの境界線が溶けていく暗闇の中で、私の胸にあったのは、彼を包み込むような、静かで、ひどく冷徹な愛おしさだけだった。
──けれど、重ね合わせた熱がゆっくりと引いていくと、部屋に微かに残る女性ものの香水の香りが、私をひどく冷静にさせた。
私たちは、寂しさという名のインクでお互いを塗り潰しただけ。ここで彼に甘い幻想を与えたら、私はただの〈都合のいい女の子〉にされてしまう。
私は冷めた手つきで制服を着直し始めた。
「……帰んの?」
背中に、擦れた彼の声が降ってきた。いつもの余裕なんてどこにもない、行かないでほしいと縋るような響き。
私は彼の言葉に、あえて何も答えなかった。
静かに立ち上がり、後ろ髪を引かれる思いを胸の奥に閉じ込め、ただ、カチャリと静かに玄関の鍵を閉めて、夜の冷気の中へと歩き出した。

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