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ほしいままに
第12章 私は今を失いたくない(森川澪奈)
「私が女を使って営業していたのを知ったら、とたんにその責任から逃れようとするなんて」
「ああ。今回責めを受けるべきは俺だ。雇用契約解除は見送るから、もう同じことをしないでくれ」
「私のクビをつなぐ代わりに、ご自身のセクハラ発言を無かったことにしろ、そういうことですね」
そう言って私は、怯える小動物のような支店長の目をまっすぐに見た。支店長は逃げるように目を伏せ、本当に済まない、と奥歯を噛み締めた。
確かに後藤支店長の「女を使ってでも契約を取れ」という言葉は、私の胸にこびりついた。このような方法で営業成績を伸ばそうと思い付いたとき、支店長の言葉が全く影響していなかったとは言いがたい。
頬の上で乾きかけていた涙を、ハンカチで拭う。
保身に走り、若い部下に頭を下げる情けない上司に向かって、私は言った。
「分かりました。あの言葉は、なかったことにします。───でも私は、今していることをやめる気は、無いです」
~第11章 私は今を失いたくない 終~

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