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ほしいままに
第14章 私は今夜、あなたに抱かれたい(森川澪奈)
こんな風に私を心配してくれて、温かいコーヒーを淹れて待ってくれる人なんて、いただろうか。
自席でコートを脱ぎながら、後藤支店長の背中を見た。
冷え切った体の芯が、だんだんと温まる心地がした。
胸が、柔らかな鼓動を刻んでいる。
コーヒーの香りを含んだ湯気を優しく靡かせて、支店長が近づいて来る。
何も言わずにデスクにそっとカップを置いて、支店長は背中を向け、自席に戻ろうとした。
その時、視界がぐらりと揺れるような感覚があって、私は前のめりになった。
転びそうにバランスを崩して両手が一瞬空をかいたあと、後藤支店長の背中にしがみついた。
このとき私が揺れて感じたのは、ほかでもない、自分自身の心だったのだ。

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