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ほしいままに
第19章 俺は彼女を離したくない(後藤将行)
森川澪奈は昨日、誰に抱かれていたのだろう。
昨日の営業先は駅から徒歩十五分の地元オーナーさんが所有する築二十年のアパートで、幼子のいる若いシングルファーザーと話を進めているはずだった。
森川澪奈はその男に、あのキスマークを付けられたのだろうか。
首筋に吸い付く男の頭をかきむしるように撫でまわしながら喘ぐ森川澪奈を想像し、俺は胸の奥がむかむかしながらも、興奮の兆しを覚えた。
俺の中ではいつの間にか、森川澪奈を抱く男たちに対して激しい嫉妬心が芽吹いていた。
彼女が不特定多数の顧客たちと関係を結ぶことに、俺はもう耐えきれない。
そう思うものの、この異常な営業行為に目をつぶる約束で、俺はセクハラ発言を言質に取られている立場だった。
だが、もはや俺のつまらない保身や大人げない嫉妬などにとらわれている場合ではない。
早く辞めさせなければきっと、彼女の心も体も、壊れてしまう。
あるいは、彼女のふしだらな生活の影が、徐々に仕事場にも、広がるシミのように侵食するだろう。
ちょうど白い肌に滲んだ、あの”キスマーク”という名の穢れのように。

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