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ほしいままに
第21章 俺は本当の君を知りたい(後藤将行)

ドアの向こうには細長く切り取られた暗闇があった。

そこに森川宗太郎が潜んでいることは間違いない。

森川宗太郎に対する警戒を知られると、森川澪奈に悪影響があるのではという直感から、俺は咄嗟にとぼけた声色を作った。

「ああ、ちょっと落とし物をしてしまって…探して回ってたんだ」

森川澪奈は大きく目を見開いて俺をじっと見ている。
俺が、彼女と森川宗太郎の関係を勘繰ってここにいると、気づいているようだった。

扉をおさえる手には力がこもっている。
そこには、これ以上先には踏み込ませないという意思が感じられた。

だが、森川澪奈の開かれた瞳には、様々な感情の色が揺らめいている。
快楽の余韻、畏れ。
そして、俺に救いを求めているような、切羽詰まった悲壮感。


森川澪奈が、ゆっくりと扉をとじる。
澪奈の顔に、病室内を満たしている影がかぶさっていく。

扉が完全に閉まる直前に、左手がふと差し伸べられた。
森川澪奈の儚げな淡い桜色をした爪が、かすかに震えていた。


───私を助けに来て。

そう言った気がした。
俺は彼女の目をじっと見つめ返した。
ほんの一瞬ではあったが、それで俺の思いも森川澪奈に伝わった確信があった。


扉が、ぴたりと俺の顔の前で閉じられる。


ドアの向こうの病室を満たす、漆黒の闇を思った。

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