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白衣を脱いだら~熟れた蜜の囁き
第1章 出会い(1)
美香は、細めで黒目がちな瞳でじっと僕を見つめている。その視線に、心臓が小さく跳ねた。視線の奥に、何かが潜んでいる。優しさか、あるいは、すでに計算された余裕なのだろうか。

「ねえ、ところで今日はどうする?」

ぽつりと、しかし確実に空気を変えるトーンで囁く。

「今日はすぐに、ホテルに行こうか?」

その言葉が、僕たちの二度目の密会の始まりだった。

*******
「今日はすぐに、ホテルに行こうか?」

その言葉が落ちたあと、店内の空気がわずかに揺れた。エスプレッソの苦い香りと、美香のフローラルな香水が静かに溶け合い、テーブルの上に薄い熱の膜を張り巡らせる。美香はくすりと微笑んだまま、昭吾の目を見つめ続けていた。黒目がちな瞳の奥に、すでに何かが静かに決まっているような、成熟した光があった。

「……分かりました。いいんですか?」

昭吾の声が少し掠れた。美香は小さく頷き、バッグを抱き寄せる。会計を済ませ、地下街の湿った空気の中を並んで歩く。エレベーターに乗るまでの短い時間、美香の肩が僕の腕に触れるたび、薄い熱が伝わる。年齢を感じさせない肌の温度。歳月が丁寧に磨いた、柔らかい余裕が、そこにはあった。

ホテルのロビーは静かで、何色か不明な冷たい床に光が淡く映っていた。チェックインを済ませ、部屋のドアが閉まる音が、外の喧騒を完全に遮断する。間接照明の光が白いシーツの上に細い縞を描いていた。美香はドアに背を預け、ゆっくりとこちらを向いた。

「緊張してる?」

「……少し」

「いいのよ。焦らなくて」

「でも…何だか夢みたいで」

昭吾はそう答えた。何だかありふれたら言葉だと思った。だが、それ以外に正解な答えが見つからなかった。

「夢だったらどうするの?」

美香は近づき、僕のシャツのボタンに指をかけた。一つ、また一つと外していく手つきは、急がず、しかし確実だった。肌が触れるたび、薄い熱が染み込む。服を脱がせ終えると、美香は自分のワンピースの肩紐をそっとずらした。萌黄色の布が床に落ちる静かな音さえ僕の鼓膜を強く揺らした。

美香は鏡の前に立ち、まず耳たぶに触れた。小さなピアスを左右ゆっくりと外していく。金属が肌を離れる瞬間、わずかな冷気が残り、耳たぶがほんのりと赤らむ。その赤みさえも、若さの熱ではなく、長い年月を経てなお残る、柔らかな血の気配のようだった。

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