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白衣を脱いだら~熟れた蜜の囁き
第5章 出会い(5)
彼との逢瀬を重ねるたびに、私の心情は、より複雑に、より深層へと沈んでいった。

ホテルの部屋に入ると、彼はいつも、少し緊張したように私を見つめた。私は、その視線を受け止め、静かに微笑む。

「どうしたの?」と聞く声は、穏やかで、どこか余裕があった。

本当は、自分の方が一番、感情に溺れているのに。

その矛盾が、たまらなく気持ちよかった。

セックスの最中も、その感覚は消えない。

彼が私の中に入ってくるとき、私は目を閉じ、自分の身体の反応を、冷静に観察する。どこが気持ちいいか、どこで声が漏れるか、どこで腰が浮くか。すべてを、自分がコントロールしているような錯覚。

快楽の波に完全に飲み込まれているのに、どこかで「私は知っている」と囁く声が聞こえる。

彼の動きが激しくなると、私は決まって彼の背中に爪を立てた。

「もっと……」と、声に出して求めた。

その声は、壊れそうなほど細く、せつなくて、けれど、決して弱々しくはなかった。

終わったあと、彼の腕の中で私は静かに目を開ける。天井の染みを見つめ、呼吸を整える。
指先で、彼の胸の毛を優しく撫でる。

「また会える?」と聞く声は、優しく、けれど、芯が通っていた。

彼が「ああ」と答えると、私は小さく頷く。

約束は守る。家庭は壊さない。

それでも、心は、自分のままに突き進む。

壊れそうで、せつなくて、それでも、こうと決めたら、もう止まらない。それが私だった。

私の心の奥には、いつも「黒い穴」のようなものが、静かに口を開けていた。

快楽で満たしたつもりでも、すぐにまた空虚が広がる。

彼との行為が激しくなればなるほど、その穴は深くなり、同時に、私はより強く、自分の欲望を確認した。

「私は、壊れているのかもしれない」

そう思う瞬間もあった。

けれど、その壊れかけた自分を私は決して見捨てなかった。

むしろ、大切に抱えるように、胸の奥にしまっておいた。
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