この作品は18歳未満閲覧禁止です

- 小
- 中
- 大
- テキストサイズ
白衣を脱いだら~熟れた蜜の囁き
第5章 出会い(5)
美香の心の奥には、いつも二つの声があった。
一つは、静かに、しかし容赦なく自分を見つめる声。
もう一つは、壊れそうなほど細く、せつなくて、それでも「こうと決めたら」と囁く声。
クローゼットを開けるたび、私はその両方の声を聞いた。
極上の下着を指先で摘まむ。レースの繊細な凹凸、絹のひんやりとした滑らかさ。布に触れた瞬間から、今夜のことが始まっている。彼の指がどこを撫で、どこを強く掴むか。自分の声が、どの瞬間に漏れるか。肌が熱を持ち、汗がにじみ、意識が白く溶けるまでの道筋を私はすでに知っていた。
「私だけが、分かっている」
その陶酔感が、胸の奥に甘く広がる。
世界を、少しだけ見下ろしているような感覚。
冷静なフリをして、一番感情に溺れているのが自分だと、はっきり分かっているのに、やめられない気持ちよさ。
勝っている、という感覚。
他の人たちは、何も気づかずに踊らされている。夫も、職場の同僚も、近所の人たちも。
日常の会話を交わし、笑顔を浮かべ、普通の妻として、普通の女として振る舞っている。けれど、私はすべて分かっている。演じてることも、退屈してることも、損してるってことも。そのうえで、それでも私が主役だと確信している。
私は、夫に足りないものを求めて不倫をしたわけではなかった。
夫は、優しく、誠実で、生活の基盤をしっかりと支えてくれる人だった。夜の営みも、決して冷たいわけではなかった。ただ、足りないのではなく、違うのだ。心の奥で、静かに疼いているものが、夫の手では触れられない場所にあった。
それは、欠乏ではなく、私自身の、抑えきれない衝動だった。
「こうと決めたら、突き進む」
その気丈さが私の芯にあった。
壊れそうで、せつなくて、それでも、一度決めたら後戻りしない。
クローゼットの中で下着を選ぶ指先が、すでにその決意を示していた。レースの縁を撫でるたび、私は自分に言い聞かせる。これは、誰のせいでもない。夫のせいでも、彼のせいでもない。私の心が、そう望んだだけだ、と。
一つは、静かに、しかし容赦なく自分を見つめる声。
もう一つは、壊れそうなほど細く、せつなくて、それでも「こうと決めたら」と囁く声。
クローゼットを開けるたび、私はその両方の声を聞いた。
極上の下着を指先で摘まむ。レースの繊細な凹凸、絹のひんやりとした滑らかさ。布に触れた瞬間から、今夜のことが始まっている。彼の指がどこを撫で、どこを強く掴むか。自分の声が、どの瞬間に漏れるか。肌が熱を持ち、汗がにじみ、意識が白く溶けるまでの道筋を私はすでに知っていた。
「私だけが、分かっている」
その陶酔感が、胸の奥に甘く広がる。
世界を、少しだけ見下ろしているような感覚。
冷静なフリをして、一番感情に溺れているのが自分だと、はっきり分かっているのに、やめられない気持ちよさ。
勝っている、という感覚。
他の人たちは、何も気づかずに踊らされている。夫も、職場の同僚も、近所の人たちも。
日常の会話を交わし、笑顔を浮かべ、普通の妻として、普通の女として振る舞っている。けれど、私はすべて分かっている。演じてることも、退屈してることも、損してるってことも。そのうえで、それでも私が主役だと確信している。
私は、夫に足りないものを求めて不倫をしたわけではなかった。
夫は、優しく、誠実で、生活の基盤をしっかりと支えてくれる人だった。夜の営みも、決して冷たいわけではなかった。ただ、足りないのではなく、違うのだ。心の奥で、静かに疼いているものが、夫の手では触れられない場所にあった。
それは、欠乏ではなく、私自身の、抑えきれない衝動だった。
「こうと決めたら、突き進む」
その気丈さが私の芯にあった。
壊れそうで、せつなくて、それでも、一度決めたら後戻りしない。
クローゼットの中で下着を選ぶ指先が、すでにその決意を示していた。レースの縁を撫でるたび、私は自分に言い聞かせる。これは、誰のせいでもない。夫のせいでも、彼のせいでもない。私の心が、そう望んだだけだ、と。

作品検索
しおりをはさむ
姉妹サイトリンク 開く


